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●もとは一つのものが、、、
はじめは映画を見ているような感じ。
どこか地方都市の郊外、開発途中の新興住宅地の一画に、
全寮制らしき学園がある。
そこでは一般の学科の他にも専門・特殊分野を学ぶことができ、
14才くらいから18才くらいまでの生徒12人余りに対して
先生が20人くらいいる。
いわゆるエリート教育ともちょっと違って、生活はのんびりと穏やかで、
生徒達はとても大切に扱われ、純粋培養状態。
問題児もいなくて理想的な共同体に見えた。
ところがある日、校長らしき人物が恐ろしい事実を明らかにする。
先生達は人間(地球人)ではなかった。
見た目は人間とほぼ変わらないが、違うのだ。
「そろそろ季節だ。我々はあの子達を大事に育ててきた。
素晴らしく純粋で高度な肉体も精神も魂も喰らうために。今が旬だ。」
しかし彼らは悪者というわけではなく、地球人を育てて食べる
(肉体も精神も)という民族性(?)を持った、
極めて感情に変化のない種らしい。
そしてそれが実行される日が来た。
その日は、生徒達は昼食に「学校を食べていい」と言われていた。
実は学校の机や椅子は自分の意志で
自分の好きな食べ物と同じ物質に変えられる、
という事を前の日に学んだからである。
ちょうどお昼の12時、教室に女の子達が3人ほどいる。
「なんだかもったいないね、学校を食べちゃうなんて。」
「でも本当に食べられるのかなあ。」
「あ、ほら、そうやって疑念を持ったらダメだって教わったじゃない。」
などと楽しげにしゃべっている。
1人が机を揺さぶる。教室はがらんとして薄暗い。
一瞬しーんと静まりかえる。
そこでその場面はカットされ、次は時計が午後1時半頃をさしていた。
教室には男の子3人。
「あー、腹減った。これほんとに食えるのかなあ?」
やはり机を揺さぶる。がらんと薄暗い教室。
「おかしいなあ。もうこんな時間なのに誰もいないなんて。」
「みんなどこ行ったんだ?」
1人が窓の外を何気なく覗き込むと、どうも外の様子もおかしい。
彼らは特に五感が優れていて第六感も発達していた。
「なんか先生達しか見えないな。あれ?、、、おい、なんか変だぞ。
あんな顔(表情)の先生、見たことないや。みんなこっちへやってくる、、?」
3人ともほぼ同時に察知した。
「殺られる」「逃げろ」
1人は廊下の左へ、2人は右へ飛ぶような速さで走った。
そしてここで傍観者だった私は2人のうちの1人の男の子になってしまった。
ここからは、今まで見たどんなSF・アクション・恐怖ものの
映画よりも凄かった。
「マトリックス」を凌ぐスピードで走り回り、遠くの先生達(エイリアン)の
動きと考えが同時に読めるのだ。もちろん向こうもそうだから大変。
ほどなくして左に行った1人の叫び声が聞こえた。
そしてエイリアン達の声も。
この音響がまたリアルというか物凄い重低音サラウンドで、
恐ろしいのなんのって。
こっちは螺旋階段を5段おきくらいに飛び下り、途中でもう1人が
「いや、下に待ってる。こっちだ。」と、その子を先頭に上に向かう。
いよいよ追い詰められてきた。
こっちにみんな集まってくるのが頭の中のスクリーンに見える。
その時上でもう1人の叫び声が聞こえた。
やっぱり上からも来ていたのだ。すぐさままた下へ降りて行く。
この知覚と判断力、身体能力は今までの人間を超越している。
今もどんどん発達・成長しているようだ。
そうだ、もしかしたら奴らと同じレベルにまで達しているかもしれない。
それに奴らも気付いているはずだ。
、、、ああ、今一番下の出口の扉のところで、、、
あいつが、スガヌマトシエが迷っている。
スガヌマトシエは奴らの仲間じゃない。奴らに雇われた従順な人間だ。
「ああ早く来てここから逃げて。そしてもうやめて。
こんなことはもう終わりにしたい。、、、ああでもやはり間に合わない。
、、、私はこうして扉の鍵を閉める。」
ガシャーンと扉が閉まった。
あの時、上に戻らずまっすぐ下へ向かっていれば間に合ったかもしれない。
いや、でもまだできる。
そうだ、スガヌマトシエの意識へ入ってもう一度迷わせるんだ。
あの時の意識状態に戻すんだ。もう一度、、、、
「早くここから逃げて。もうこんなことはまっぴらよ。
私が扉を閉めるまでまだほんの少し時間がある。今来れば、、、」
奴らが気づいた。
あいつが、トシエがコントロールされている!やはり人間だから。
今だ!扉が閉まる直前で僕(私)は外へ出た。
直後、扉はガシャーンと大きな音をたてて閉まった。
しかしエイリアン達は僕が外へ出たのを知っている。
「外へ出たぞ!こんなことは今までなかったのに!」
「外だ!外を探せ!」
奴らも少し焦っている。そうだ、こんなことはなかっただろう。
さあ、あの茂みに隠れるんだ。
気配を消して、目を閉じて意識を植物と同じにするんだ。
僕はこの大地とつながる植物と同じ。若い女の先生が来る。
でも気づかれない。
そう、彼女にはわからない。彼女には僕が植物と同化して見える。
まぶたの上をムカデが通る!すぐに通り過ぎるさ。がんばれ。
ほら、彼女は気づかずに行ってしまったよ。ムカデも通り過ぎた。
さて、ここからだ。
どうする?
この敷地の外へ出るには、あの柵を越えるにはやはりあの時に上に戻らずあのまま
行くべきだった。タイミングは逃してしまった。あの柵までは遠すぎる。
奴らはそこら中にいる。
、、、
ああ、、、彼に、「彼」に見つかるなんて、、、!
目を閉じていてもわかる。「彼」が見つめている。
、、、!
「彼」も迷っているんだ。
見えないふりするかどうか。このまま見過ごして僕を自由にするかどうか。
でも、そう、そうだよ。
他の奴が、きっとボスが見つけるさ。
そう、それならあなたに見つかって殺られるほうがいい。
そうだね。
僕が植物との同化をやめるのと同時に「彼」が背中をポンと叩いた。
「でも殺さない。」
「彼」は、三日月型の金属片(エイリアン達はみんなそれを持っていて、
それに触れると人間は一発で動けなくなるらしい)を自分の胸元へ収めた。
僕は不思議と落ち着いていた。もう恐怖はなかった。
逃げるのはやめた。逃げなくていいんだ。
エイリアン達が僕の顕在意識を察知して集まってくる。
僕は「彼」に連れられて皆の前へ出る。
「生け捕りにしたのか」
もはや誰も言葉をしゃべらない。そのまま思考が入ってくる。
「彼」は僕より少し年上の、若い先生で一番親しかった。
「君は素晴らしい。純粋でどの能力も優れている。」
一瞬、「彼」はもしかして僕を自由にしようと提案してくれるのかと思った。
だがすぐにボスがその可能性のないことを告げた。
やはり殺られるしかないんだろうか。
そうだ、もし自由になって柵の外へ出られたとしても、
僕はここのことが気になって覗いてしまうだろう。
そして「彼」を探してしまうだろう。出たら二度と戻れないと知っていても。
そうだ、ここは普通の人間の生活する三次元の現実世界では
ただの雑木林なのだ。
彼らの姿は見えない。でも存在する。
僕にはわかっている。戻り方さえ知ることになるかもしれない。
だから結局同じことなのさ。
「そう、だから」彼が語りはじめた。
「こうするしかない。君を取り込むしかない。またひとつに戻るしか。」
そうだった。僕は「彼」から、「彼」の一部で作られたのだった。
彼らは自分達の遺伝子を使って僕らを作り、育てたのだった。
より高度な進化を遂げるために。
いったん自分の一部を自分から切り離し、異なる環境で培養させ、
その個体が肉体的・精神的・霊的にも成長期真っ盛りの時を見計らって、
再び自分自身に融合させるのである。
しかし、より高度な進化、というのは表向きの理由であって、
実は彼らは寂しかったのかもしれない。
なぜなら「彼」が語り始めた途端に、言い知れぬ寂しさ・孤独感が
一斉に彼らから溢れ出てきているのがわかったから。
いずれにしろ、寂しかったからもしくは自己の探究のため、
より高度な進化のため、 元はひとつだったものが二つに分かれ、
お互いを知ることで自己を知る。
そして当然引きつけ合う。
離れるのを恐れるようになる。それで遂にはまた一つに戻る。
「ずっとその繰り返しだ。やっぱりこうするしかないんだよ。」
なんで今まで気付かなかったんだ。
「彼」の肌の色、眉の形、目、鼻、唇、黒髪、、、
どれも僕にそっくりじゃないか?
「でも終わらせたいんだ。もう。ずっとそれを考えてた。」
僕が「彼」に親しみを感じたのはそのせいだ。もちろん憧れも。
「僕だって君に会えなくなるのは辛い。でも、、、わかるだろう?」
あれだけ攻撃的だった奴ら=彼らが今はすっかり意気消沈して
深い悲しみと孤独感にとらわれている。哀れにさえ思えてくる。
、、、「彼」が三日月型の金属片を手に僕に近づいてくる。
「これで最後だよ。もう、、、」
涙が溢れ出てきて、何も見えなくなった。意識もなくなった。
気がつくと、僕はひとりで自分の部屋らしき場所に座っていた。
部屋は散らかっている。
今日は休み。掃除しなきゃと思ってたけど、面倒臭いな。
外で小学生が野球をしている。
窓の外を見るとグラウンドの向こうに雑木林が見えた。
ああ、あそこは、、、
あ?れ?、、、そんな。
なんてことしてくれたんだ。
彼らは存在し続けるのをやめてしまったんだ。
何世代にも渡る彼らの歴史を、
物語として僕の記憶の中に封印してしまった。
そう、彼らははじめから存在しなかった。
遺伝子実験もなかった。「彼」もいなかった。すべて物語になってしまった。
今では彼らが「人間を喰らう」ことも悲しむこともないのだ。
でも僕にとってはすべて真実だった。
最後に見た「彼」の顔を忘れることはできない。
今でもはっきり思い出せる。一体、あれは何だったんだろう。
元はひとつだったものが二つに分かれ、再び一つになる。
光と闇もそうなのだろうか。
彼らは自分の一部から僕らを作った。
確か聖書のはじめのほうにも似たようなことが書いてあったな。
「彼」は僕の中にいる。でも、、、
涙が溢れてきた。
(夢:宝達奈巳)
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